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2008/01/19 (Sat) ソコカラナニガミエル?

 年末、友人から「鉄コン筋クリート」のDVDを借りた。
 松本大洋さんのマンガのアニメ化。ぽっさは鉄コンのことを全然知らなかったけれど、弟ルノーは、知っていた。マンガも持っているそうだ。

 鉄コンをご存知ない方のために、ちょっと紹介。
 主人公クロとシロという兄弟2人は親がいなく、宝町という町でホームレス生活を送っている。宝町は古き良き昔を今に残している町なのだが、この町を振興開発しようとする一味がやってくる。それに便乗して儲けようとする町の暴力団の組長。でも、暴力団の組員の中には昔ながらの町を愛する者もいたり。そのほかには、町の刑事(おじさんと新米さん)、町のチンピラに、クロとシロのおじいさん(やはりホームレス)・・・・登場人物が多い。
 町の開発に対する人の欲と郷愁、クロとシロの心の絆、クロの心の変容、登場人物それぞれの心象風景がストーリーと絡み合って構成されている。ストーリーを追うだけではこの「鉄コン」は語れない。百聞は一見に如かずです。

 見終わった後に、あったかくなった。

 「ソコカラ ナニガ ミエル?」っていうのがキーワード。
 登場人物一人ひとりの心模様がとても鮮やかで心に響く。
 例えば、木村。
 木村は暴力団の組員なんだけれど、クロにボコボコにされて、暇を出される。それで、振興開発グループに拾われるのだけれど、木村の女に子供ができたことがわかり、真っ当に生きようと思った矢先、ボスから育ての親みたいな存在の鈴木を殺すよう命令される。
 木村は鈴木を殺し、人生をやり直す覚悟でボスを殺す。それで、町を出ようとした瞬間、ボスの部下たちに殺される。
 木村を見ていたら、ウォン・カーウァイの「天使の涙」を見た時の感覚になった。あの映画のぽっさのイメージは青春を漂う若者たちが大人になろうとする、社会で一人前になるって決めた瞬間、死んじゃう・・・つまり、青春から出る瞬間を描きたいのかなぁって思ったんだ。
 社会に出る前の曖昧さ、いい加減さ、ある時は夢見心地だったり、いい気になったり、ある時は不安に駆られたり、暴走したり、何でもできそうな気分になったり、まるきり何も出来ない不自由さや絶望感を感じたり・・・それは、めぐるめく世界だ。
 でも、ある時ふと、気づく。いろんな波の先にあったのは、実生活。
 青春の終わりの瞬間は長い長い夢を見ていて、はっと起きた時に味わう感覚に似ているように思う。
 
 木村にまつわる話をもう少し。
 木村の親代わりみたいな存在の鈴木は、木村が自分を殺すと気づいていながら、そうさせた。町が変わっていく今、鈴木は自分の時が終わったと感じていた。町に愛着のある人の悲哀感が胸をつく。
 それから、木村の妻が最後の方でいう台詞。木村が子供の名前を「真」にするとはしゃいで言った時にぽつりと、「男の子は嫌。女の子がいい」って、涙まじりに言うの。男の子だと木村みたいに危なく生きる可能性を思うと、女の子がいいって思うその母親の心がじんと来る。

 主人公のクロとシロのことを書く前に長くなってしまったので、この辺で。
 クロは嵐の二宮くん、シロは蒼井優ちゃんが担当している。二宮くんも蒼井優ちゃんもぴったりだった。二宮くんのインタビューを見たら、このマンガの大ファンだから、気合入ってました。
 蒼井優ちゃんはすごいと思った。声の表情がとても豊かで、シロだったよ。蒼井優ちゃんのインタビューでは、原作を読んでたら、シロの声が聞こえてきて、その声に近づこうと頑張ったんだって。女優魂か・・・すごいなぁ。

 声優さんがすごい!大悪党にもっくん。新米刑事がクドカン。町のチンピラに岡田義徳さん(木更津キャッツに出てた)、鈴木が舞踊家で俳優の田中泯さんなどなど、こだわりを感じちゃいます。

 ソコカラ ナニガ ミエル?って、何かの折にふっと心に問うようになった。
 クロとシロみたいに物事には何でも対比関係にある。善と悪、明と暗、温と冷、柔と固とかいろいろ。気づくと、とても狭い所でモノを見て、突き詰めようとしていがちだ。
 そもそも、自分の目で見るということ自体、主観が入っているのだもの、凝り固まりやすいのはもっともだ。
 だからこそ、いつも「ソコカラ ナニガ ミエル?」って、もう一人の自分に言ってもらって、主観ながらも客観性を帯びたモノの見方をしたいものだと思う。
 ・・・って、これは、全然、「鉄コン」とは違ってきた話だが。

 友人が原作もいいよって言ってたので、そのうち、借りて、読むことにしまぁす。楽しみ、楽しみ。
 弟ルノーは「面倒くさい」「重い」を理由にマンガを持ってきてはくれなかった・・・。
 本当は、弟ルノーが喜んで「鉄コン」を見ると思っていたのに、弟ルノーは、ちいとも関心を示さなかった。パッケージを見て、「お、すげーな」と言っただけだった。
 パパになるって、こういうことなんだなぁとしみじみ思った。弟ルノーがマンガに没頭していて、明日もわからぬ日々は遠い昔で、今は一家の主で、生計を立てている。そう。ルノーはもうとっくに、青春の終わりの瞬間を越えた若者だったのだ。
 しんみりもしたけれど、頼もしいなぁと思った。青春の終わりの瞬間を越え、今は家庭を持ち、新たな幸せのうちに日々、切磋琢磨しているのだから。
 木村も「天使の涙」の若者も死んじゃうけど、ルノーは当たり前だが生きている。なんかさぁ、映画では死んじゃうけど、実際の人々の人生は青春を終えても続くのだっていうところで、「鉄コン」も「天使の涙」もより感動なのだ。うまく言えないけど。

 ミナサン、ソコカラ ナニガ ミエル? 

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